風土を知る

アニミズムという希望(著:山尾 三省)-森羅万象への親和力

屋久島の山間集落・白川山(しらこやま)に暮らした詩人・山尾三省さんが1999年に琉球大学で行った5日間の講演録。
縄文杉を謳いあげた『聖老人』など自作の詩を朗読しながら、人の自然との関わり方や生き方を伝えています。

時にインドや古いギリシャの哲学にも話が及びますが言葉遣いは易しく、ユウナの花の美しさなど沖縄滞在中にご自身が感得した実感も交え、仰りたいメッセージがすっと入ってきます。

この講演の中で山尾三省さんは、身の回りにある、美しいと感じるもの、心落ち着かせてくれるもの、気持ちよく感じるもの、あらゆるものがカミであると仰っています。
その上で経済成長のように直進的に進む時間だけに追われることはバランスを欠いており、季節や生死といった循環する自然の回帰する時間をもっと大切にしなければならないと伝えています。

そこで必要になるのが、自分がいる場所で自分を取り巻く環境とつながりを感じる親和力です。
自分のとらえようによってカミを見出すことができる、自分の身近にある自然ーそこには生物も非生物も含まれますがー、それらと自分が同類であると感じられること、そのつながりの中で生きていると感じられることが、回帰する時間を生きることにもつながるのです。

人もまた自然の一部であって、切り離して考えられない。
経済活動も自然環境のキャパシティを超えて行うことはできない、むしろ経済活動を通じて自然環境を再生させなければ続けられない。
やっと今になってマージナルではなくなってきた考え方を、四半世紀以上前にすでに唱えていらしたんですね。

本書は、こうした感性で捉え、詩として表現した屋久島の自然や暮らしを、著者ご本人の言葉で解題してもらいながら味わえる、という読み方もできます。
ぜひ著者の目に映った屋久島を追体験してみて下さい。

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