風土を旅する

自然と人と”掛け合う”島

”強い”自然

奄美大島の自然はとても”強い”と感じます。
海のすぐそばまで木々がせまり、人々が暮らす集落はその海と木々の間にはさまれて横たわっています。
濃密な自然が人々の暮らしているすぐ近くにあるのです。

大きな存在感を放つ奄美の自然は、恵みももたらせば災害ももたらします。
島の温暖な気候は農作物や果樹を実らせる一方、ひとたび猛威をふるえば爪痕を残すこともあります。

強く近い自然とあって、人々はその恵みをいただくために精一杯手を尽くし、畏れ、祈りを捧げてきました。

龍郷町の秋名集落で旧暦の8月に行われる秋祭り「ショチョガマ」と「平瀬マンカイ」はそれぞれ田や畑山の神々への豊作祈願と海のかなたの豊穣の国(ネリヤカナヤ)の神々への祈願です。

写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟
写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟

奄美大島の自然との対し方は、手を尽くしつつも祈り、身を委ね、また自然からの返答に対して手を尽くしていくようなところがあります。自然は手なずけ克服する対象ではなく、掛け合いする相手であるかのようです。

こうした対し方は奄美の伝統的な染め、泥染めにも通ずるところがあります。

泥染めはシャリンバイの木を煮出した染料と泥田に素材を交互にひたすことを繰り返して深みのある色合いに染め上げていきます。
泥田のコンディションは日々変わっていき、どのように染まるかは毎回やってみなければ分からないそうです。その日の状況を見極めながら染め方を考え、結果を見ながら思うような発色をめざしてやり方を変えていく。
自然と呼応しつづけるプロセスがそこにはあるように思います。

奄美大島ではサーフィンがさかんですが、それは根底にある自然との対し方が通じているからではないかと思います。
波に乗るという行為は、まさに自然との掛け合いです。

自然と call & response し続けるような暮らしが奄美大島にはあります。

人同士も”掛け合う”

自然と人との関係の写し鏡のように、人間関係のあり方も奄美大島ではどこか掛け合い的です。

島の伝統的な芸能である島唄には譜面や決まった歌詞がありません。生活のシーンの中で、居合わせた人々が即興的に歌を紡いでいくのがスタイルです。

また結いという助け合いの精神も、ひとり勝ちするのでなく周りの人とともによくなろうという姿勢の表れではないでしょうか。名瀬の商店街にあるアパレルショップ、トルトゥーガさんは島内の作り手を応援すべく店内に展示販売のスペースを設けています。

自然も人も掛け合いでつながっていると思うと、全てが自分の考えた通りに進むはずということが思い込みに過ぎないことがよく分かります。
それはあきらめにつながるのではなく、どんな結果も自己責任として引き受けなくていいという余白を感じさせてくれます。

奄美大島を訪れた時に感じるどことない居心地のよさは、このちょっとした赦しの感覚が生んでいるのではないかと思います。

自然と人と”掛け合う”島 行程例

1日目 各地発→奄美大島到着

レンタカーにて移動・秋名集落到着後集落歩き

■秋名集落■農作物の恵みに感謝し、次の豊作を祈る奄美大島の秋祭り「アラセツ」。集落ごとに行われるアラセツですが、秋名集落で行われるものは山と海それぞれの神に祈りをささげるもので、島の方々の自然観のあらわれを感じることができます。大島紬の有名な柄「秋名バラ」発祥の地でもあります。

集落内や名瀬の宿泊先へ移動(泊)
2日目 朝食後、レンタカーにて移動。奄美大島での”自然との掛け合い”を体感。

■節田立神■奄美大島には、海のかなたの「ネリヤカナヤ」からやってきた神様によって作られたという伝説があり、海から豊穣の神様がやってくるとされています。その神様が島に上陸する前に立ち寄る、集落の浜にある大きな岩を立神(たちがみ)と呼び、信仰の対象とされてきました。奄美大島北部、節田の集落にあるのが節田立神で干潮時には足をぬらさずにわたることもできます。信仰の対象であるとはいえ、集落の方々にとっては身近な存在で、近くを散歩をしたり、ウクレレのような小さな弦楽器を練習したり、それぞれが思い思いの時間を過ごしています。

■泥染め体験■奄美大島の代表的な伝統工芸品・大島紬の制作に欠かせない泥染め。シャリンバイという木のチップを煮出して発酵させた液と泥田での染めを80回以上繰り返すことによって美しい黒色を発色させています。奄美大島の細かい粒の泥だからこそ、絹を傷めず染めることができるそうです。同じ泥田でも天候など条件で色の入り方が変わってくるそうで、まさに自然と掛け合いながら色を仕上げていくプロセスです。

■黒糖焼酎蔵見学■黒糖焼酎は奄美群島でしか生産が認められていないお酒です。島のサトウキビを一度黒砂糖に加工し、米麹と合わせて作られます。農作物を一度加工品にしてから酒造りに使うという工程が世界でも珍しいものだそうです。太平洋戦争後アメリカ統治下にあった8年間、島外に持ち出せないサトウキビ・黒砂糖を原料に焼酎を造っていたという歴史があったことから、特例として認められたのだそうです。もちろん島の方にとってはソウルドリンクであり、お酒の席では欠かせない存在です。

オプション:ナイトツアーで夜の野生生物観察

1泊目と同じ宿泊先へ(泊)
3日目 オプション:サーフガイド or SUP体験

奄美大島発→各地へ
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