風土を知る

自然を畏れつつ委ねる

山が海にせまる奄美大島

青、蒼、碧。
奄美大島の海は同じブルーでもさまざまな色合いを持っています。
そんな海の美しさに目をうばわれがちな奄美大島ですが、実は島の3分の2は森林。海のすぐ後ろには山がせまっているという地形が多いです。

奄美大島の南、加計呂麻島との間に横たわる大島海峡。緑の樹々が海のすぐそばまでおおっている様子が見て取れます
「龍の目」として知られるかがんばなトンネルも、山から海に一気に落ち込む地形がなせる光景

包まれる感覚

海と山にはさまれた奄美大島の集落にいると、濃密な自然に包まれているという感じがします。

奄美大島には、海の幸・山の幸・集落を守る神が集落の背後の山に住んでいるという信仰があり、カミヤマ(神山)と呼んでいます。
また海のかなたにあるネリヤカナヤという理想郷から海を渡ってやってくる神は豊穣をもたらすとされ、集落の中にはその通り道であるカミミチ(神道)やお祀りする空間があります。

集落を取り囲む海や山に強い存在感を覚えるのには、こうした奄美大島の人々の精神性も関係があるのかもしれません。
近くて強い自然は、恵みをもたらす存在であると同時に、激しい力で災厄をもたらす時もある。島の伝統的な染めである泥染めとも通じるところがありますが、畏れつつ身を委ねるという自然との対し方が奄美大島にはあるように思います。

自責の荷を下ろす

奄美大島でこんな存在感のある自然に囲まれる環境に身をおいていると、何でも自分で抱え込むのはおこがましいという気持ちになります。それは自分の無力さを思い知らされるというのではなく、全ては自分次第であるという自責から解き放たれる感覚です。

2021年12月、しばらくぶりに奄美大島を訪問し、朝の海岸で思い切り深呼吸をしました。
海と草の匂いがまじった甘い香りが胸いっぱいに広がり、その濃密さに「ああ、今奄美大島にいる、帰ってきている」という感覚を覚えました。

忙しい毎日に追われ一息つきたいーーそんな時こそ奄美大島の自然に包まれ身を委ねに行ってみて下さい。何をするでなくとも、ほっと肩の荷がおりる感じがすると思います。

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