風土を知る

地下水のある暮らし

水をたたえた石灰岩のプールがライトに照らされて青白く光っているーーそんな沖永良部島の地下に広がる絶景をテレビで見たことがある方もいるのではないでしょうか。今やケイビングという新しいアクティビティのスポットとしてハイライトされる沖永良部島の地下洞窟ですが、その成り立ちには島の暮らしと密接なかかわりがあります。

地下洞窟ができた理由

沖永良部島の地下には300を越える洞窟があるとされています。なぜこんなにたくさんの地下洞窟ができたのでしょう?
それは沖永良部島がサンゴ礁が隆起してできた島だからです。琉球石灰岩でできている沖永良部島の土地は、雨に溶けやすいという特徴があります。島に降った雨は地表から染み込み地下に空洞を作っていきます。一方石灰岩が溶け込んだ水はカルシウムやマグネシウムを豊富に含んだ硬度の高い水になります。硬度の高い水が地下の空洞でしたたり落ちるとき、含んでいたカルシウムが固まりつらら状に石化します。つららの先から落ちた水は今度は地上にたけのこ状に固まっていきます。こうしたプロセスが長い年月繰り返されて今あるような洞窟が形成されてきました。

島の生活を支える地下水

このように”穴がいっぱいあいている”沖永良部島の土地は、水はけがよく地下水が豊富という特徴を持つようになりました。地中にしみ込んだ水のうちあるものは川となって地下を流れ、またあるものは湧き水となって地表に現れます。
沖永良部の人々は、水道事業が始まる1960年頃より前、こうした地下の川や湧き水を生活のための水源として使用してきました。
地下の川の特に大きなものとしては、知名町住吉に今なお残る住吉暗川(くらごう)があります。

住吉暗川の底から見上げる入り口。

暗川へ水を汲みに来るのは女性の仕事でした。女性たちは暗川へ日参し、飲み水を汲んだり、洗濯をしたり、水浴びをしたそうです。暗川はそこへ行けば毎日顔を合わせる社交の場でもあったのです。(ちなみに今でも集落の運動会で、桶を頭にのせて競争する競技があるそうです!)

同じ知名町の瀬利覚(せりかく)という集落にはジッキョヌホーという水場があります(ジッキョは瀬利覚の呼び名、ホーは川という意味)。平成の名水100選にも選ばれたジッキョヌホーもやはり水道が整備されるまで地元の貴重な水源であり、また交流の場でもありました。今でも夏になると子どもたちが賑やかに水浴びをし、集落の祭りの会場にもなっています。

それに沖永良部島では農業がさかんです。名産はサトウキビとじゃがいも。水はけがよく地下水が豊富という土地柄だからです。また島の赤土も農業に適していますが、これも隆起サンゴ由来のものだそうです。

実はみんなつながっている

地下洞窟、地下河川、農業。一見ばらばらに見える沖永良部島の特徴ですが、元をたどればみんなサンゴ礁が隆起してできたという島の成り立ちが理由となっています。
そんなつながりを知りながら島を訪れてみると、ケイビングの体験も、特産品も、観光も、より土地との結びつきを感じながら味わえるのではないでしょうか。

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